ブライアン・グリーン著『隠れていた宇宙』(2011年 早川書房)を読みました

宇宙はいっぱいあります。たぶん。

ブライアン・グリーンさんの『隠れていた宇宙』という本を読みました。2011年に書かれた多元宇宙論についての本です。

ブライアン・グリーンさんは、超弦理論の研究で有名なアメリカの数学者・物理学者です。

ハーバード大学を卒業して、オックスフォード大学に留学して博士号を取って、コロンビア大学の教授をしています。

超エリートですね。

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『隠れていた宇宙』の前には『エレガントな宇宙』という本も書かれていて、この『エレガントな宇宙』はテレビのドキュメンタリー番組にもなっていました。

昔(調べてみたら2005年でした)NHKでその『エレガントな宇宙』を見たことがありますが、ブライアン・グリーンさん自身が出演してナビゲーター役をしていました。

その番組で『M理論』だの『ブレーン宇宙』だの『超対称性粒子』だのという単語を初めて知りました。

M理論!!! ブレーン宇宙!!! 超対称性粒子!!! なんだかカッコイイ。

『隠れていた宇宙』は『エレガントな宇宙』の続編的なものだと思うのですが、多元宇宙論についてより詳しく説明されています。

「この宇宙とは何なのか?」「この世界とは何なのか?」という問いに対する研究は、アインシュタイン相対性理論やボーアの量子論から、場の量子論やひも理論へとどんどん発展しているわけですが、どの理論でも「その理論どおりなら宇宙はひとつじゃないよね」という結論が導かれてしまうそうで。

この本でも9パターンの多宇宙のアイデアが説明されています。

  • パッチワークキルト多宇宙
  • インフレーション多宇宙
  • ブレーン多宇宙
  • サイクリック多宇宙
  • ランドスケープ多宇宙
  • 量子多宇宙
  • ホログラフィック多宇宙
  • シミュレーション多宇宙
  • 究極の多宇宙

この手の説明は、たいてい一目見ただけで石になってしまうような数式を使ってされることが多いと思うのですが、ブライアン・グリーンさんは、この本の中では数式を使用せず、イメージ図を使って分かりやすく説明しようとしています。

といってもやっぱり難しいんですが。

難しいながらも、エヴェレットの多世界解釈のくだりなんかはちょっとおもしろかったですね。

多元宇宙論の本を書くだけあって、ブライアン・グリーンさんはコペンハーゲン解釈(箱を開けるまで箱の中の猫は生きている状態と死んでいる状態が重なっていて、箱を開けて人が確認したときに初めて猫の生死が確定するってやつのことであってる?)よりもエヴェレットの多世界解釈推しのようです。

エヴェレットの多世界解釈は、大学院生だったエヴェレットの博士論文に書かれていたものだそうですが、師匠のホイーラー(この人だってブラックホールのことを初めて『ブラックホール』を呼んだすごい物理学者だそうです)には理解できず、ホイーラーがコペンハーゲン解釈の親玉であるボーアに相談したけどボーアにも理解できず、結局大部分をカットさせて最終的な博士論文になったそうです。その後エヴェレットはアメリカ国防総省に就職して物理学の研究も止めてしまったのですが、ずいぶん経ってからカットされる前の方の論文が評価されたんだとか。

このあたりの話は、もしも映画かなにかになったら見てみたい気もします。(アラン・チューリングの『イミテーション・ゲーム』やジョン・ナッシュの『ビューティフル・マインド』みたいな感じで頼む)

「私達のいる宇宙」の外にある宇宙は、私達には行くことも見ることも触ることもできないものなので、理論的には宇宙はいっぱいあるはずだといっても、今のところそれを実証する手段はなく、「実証できないものが科学って言えるの?」というところでブライアン・グリーンさんもいろいろ苦労されているようです。最終章は、言い訳というか愚痴みたいになっています。

SF映画みたいに、あっちの世界とこっちの世界を行ったり来たりできれば話は早いのですけど。

ヒッグス粒子重力波について「20〜30年後には検出できるのではないか」と書かれていますが、ヒッグス粒子はこの本が出版された直後に検出されていますし、重力波も数年後に検出されています。

同じ様に、多元宇宙の証拠も近々見つかるといいですね。